Inicio2           Formoza先住民族トバ族訪問記  (10/12)       船川玲子氏                                                                                                   前頁へ 次頁へ

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  でした。その家もスサーナの家と同じようなつくりで、広い庭には放し飼いのヤギが

  たくさんいます。ここも大家族のようです。家長らしい老人が、庭の木の下の椅子に

  座っていましたが、私達が挨拶をすると、立ち上がって手を差し出しました。先ほど

  の女性は老人と同じ木陰に座り、もうせっせとタペストリーの製作に手を動かしてい

  ます。私達へのサービスのデモンストレーションではなく、実際に寸暇を惜しんで製

  作しているようでした。スサーナの家からぞろぞろついてきた子供達は、私達が写真

   を撮ろうとすると、わっと集まって、精一杯のすまし顔を作ってレンズの前に並びま

す。貯水槽から汲んだ水を飲むために順番を待っている子、Tシャツをまくり上げて汗

  を拭く子、土をつつく雌鳥、それらを笑顔で見守る家長。スサーナの家と全く同じ光

  景が、そこにありました。

   スサーナの家に戻ると、またフアン氏がいろいろ話をしてくれます。フアン氏の
  話しを聞きながら、とふと気がつきました。フアン氏ともう一人の男性、それにおじい
  さん以外、男性の姿がありません。子供と女性ばかりです。道路工事など、どこかに
  働きに行っているのでしょうか。先住民族の人々の失業率は25%だと、フォルモッ
                    タペストリはこんな簡単な道具だけで織る .
サ州の団体が発行する雑誌に載っています。この共同体でも状況はほぼ同じでしょう。先ほどのフアン氏の説
明でも、男に仕事が無い、と嘆いていました。厳しい現実です。そのような中で、女性達が織るタペストリーは直
接現金収入に結びつく大切な仕事です。気のせいか、フアン氏など男性には元気があまりなく、現金収入の道
を得た女性達が生き生きしているようでした。寸暇を惜しんでタペストリー製作に励むのが分かります。販路拡
大が現実になってきたからでしょう。「これまでタペストリーは町のフェリア(Feria:市(いち))や、時にはミニバス
に揺られ2日がかり、3日がかりの旅をして遠くブエノス・アイレスなどに行って売る以外に方法がなかった。そ
のフェリアでさえ招待状が無いと売ることができなかった」、とスサーナは言います。販路はかなり限定されてい
たのではないかと想像されます。そこに今、JICAやNGOの支援の手が入っています。これまでも共同体への水
の供給、養蜂、自然林保護や織物製作など、技術的な支援をしてきたJICAやNGOが、これからタペストリーの
販路拡大に向けた支援も行なっていくといいます。今後、女性の発言権も強くなり、男は外で働き女は家事をす
るという固定観念が崩れる日もそう遠くはなさそうです。過酷な気象条件の中で必死に自分の土地を守ってい
こうとしているスサーナ達は、今、差し伸べられた手にすがって、立ち上がろうとしているところなのかもしれませ
ん。
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