Inicio2           Formoza先住民族トバ族訪問記  (11/12)       船川玲子氏                                                                                                   前頁へ 次頁へ

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すでにシエスタ(昼寝)の時間でしょうか。急に空腹を感じた私は「皆さんお昼は?」

と聞こうとして気がつきました。家の隅にあるテーブルの上にプラスチックの皿が3

枚、そしてやはりプラスチックのカップが2コほど置いてあり、それが23人全員が使

う容器らしいという事に。スサーナが家の中を見せてくれましたが、台所などが見当

たらず、炊事は外でするのだと言っていましたっけ。他の人たちは自分達が使った食

器を私達に出す事を遠慮して、私達が帰るまで食事をとらずに我慢しているのかもし

れません。テーブルの真ん中に飲料水の入った大きなバケツがおかれ、その横にカ

ップがひとつ置いてありました。家族は一同に会するのでなく適当にバケツの中から

水を飲み横に置かれた食べ物をつまんで食事をとるのかもしれません。私達も皆と

同じように食事をすればいい、とスサーナは考えたのでしょうが、きっと反対され、

「食事は一緒にとれなくなった」、と私達に言い出せなくなったのかもしれません。

私達はあわててスサーナの家を辞す事にしました。私達が”帰る”というのをきいて
皆がほっとしたような表情に見えたのは気のせいでしょうか。
   スサーナと妹のエミーリア、そしてネルソン少年が共同体のはずれまで送って
くれました。私達の歩く足元からさえ土が舞い上がります。何日か前にフォルモッサ
で雨乞いの儀式が行われたと新聞で読んだ事を思い出しました。食器を洗う水を節
約するために食器は最小限しか使わない。それは、このように水が貴重な地で生活
する人達の生活の知恵なのでしょう。でもそれがどんなに地球にやさしいことか。陶
器集めが趣味、などと言いながら不必要な食器まで使い、余分な水を使っていた自
分の生活を大いに反省させられました。共同体は決して豊かではありませんが、こ
こには逞しさ、意気込み、そして子供達の強さ、明るさがありました。そして何より温
かさが漂っていました。決して気負うことなく、淡々と編み上げているように見えます
が、トバ族のタペストリーには、暑さや強風や砂嵐と闘いながら、質素に逞しくそして
謙虚に生活している人達の喜びや悲しみが編みこまれているに違いありません。

町まで送ってくれると言うスサーナに、共同体のはずれで別れることにした私の手を

スサーナはしっかり握り、「またきっと来て!」と言いました。女同士のおしゃべりをす
るために、帰国前にもう一度、スサーナに会いに来よう、私はそう心に決めました。
   共同体から町中のホテルに戻って来ましたが、既にシエスタの時間に入って
しまったため店は殆ど閉まっており、コーヒー1杯とビスケット3枚のホテルの朝食
を食べたきりで、レストランが開く夜9時まで過ごさなければなりません。
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